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●相続税・贈与税/相続税調査の実際
2011年09月26日(月)
相続税調査で申告もれを指摘される比率は85%
相続税調査で申告漏れを指摘される比率は85%にのぼるとする、国税庁統計資料が存在します。
同じく国税である法人税の非違(否認されるという意味)割合は70%という別の資料もあることから、相続税の申告もれを指摘される確率は、これと比較しても相当に高い傾向がうかがえます。
ケアレスミスや評価ミスが原因であることも考えられますが、財産の持ち主がすでに死去している中で遺産の特定をしていかなければならないという、相続税申告に特有の作業があるところにも、相応の原因があると考えることもできます。
種類別、申告もれ相続財産のダントツ1位は「現金預金」
この国税庁統計資料を紐解いていくと、さらに親切なことに、税務調査で申告もれを指摘された財産を種類別に明らかにしてくれています。
この中で、ダントツの1位であるのが「現金預金」で、申告もれ相続財産の金額の構成比として、全体の33%を占めています。
税理士からすると、土地の評価や非上場株式の評価といった部分に専門的な注目が行きがちですので、この結果にはやや意外な感じもしなくはありません。
しかし、実際の相続税調査はそのような論点に切り込んでくるというよりも、むしろ現金預金の調査に重点を置いていて、しかも非違事項が出やすいということも、統計資料の数値を見るとうなずける部分もあります。
「名義預金」と「郵便貯金」が問題になりやすい
現金預金の調査で問題になるのは、名義預金の存在です。名義預金とは、預金通帳は被相続人以外の名義ではあるものの、実際の預入は被相続人の財産から行われ、また預金通帳や通帳届出印は被相続人が管理をしていて、相続人は生前その預金の存在すら知らなかった・・・という類の預金のことです。
相続税申告の際には、預金通帳の名義が被相続人の名義になっていないとの理由で、これを当然のように相続財産に含めないでいると、そこに対して申告もれを指摘してくるというものです。
単に通帳名義を変えただけで相続財産から除かれるとなると、これほどカンタンな相続財産はずしはないということで、当然のように相続税調査の重点項目となっています。
また、郵便貯金の申告もれにも要注意です。これは、郵便局が発行する残高証明書のみに依拠した相続財産の特定を行うと、その他の郵便貯金の申告もれが生じやすいという、少しトリックじみたところに起因するものです。
というのも、郵便局の残高証明の発行は、相続人から申請を受けた郵便貯金口座についてのみの残高証明を行うという対応ですので、相続人が把握していない郵便貯金口座は、残高証明には自動的に掲載されてくるわけではないからです。
相続人が把握していない現金預金をどう把握してゆくか
これはなかなか難しい問題でもありますが、相続税申告の準備の段階で、税務調査を意識した遺産の特定を綿密にしていくことに尽きると思います。具体的には、被相続人が生前に、現預金の所在や管理について配偶者や子、その嫁や孫に話していた内容を相続人同士で持ち寄り、関与税理士に早い段階で伝えておくべきでしょう。
また、税務調査官の現預金調査の手順を知っておき、それを相続税申告の準備の段階で自分たちで実施してみることも、有効な手立てだと思われます。
1件あたりの申告もれの規模にも注目
先の国税庁統計資料では、申告もれ1件あたりの申告もれ課税価格と追徴税額について、前者が3,400万円、後者が729万円であることを明らかにしています。
ひとたび申告もれの指摘を受けると、金額的な影響も大きくなるのが相続税の特徴的なところであり、その申告もれ財産として最大のリスクがあるのが「現金預金」の項目です。それだけに、この部分には特に注意をしてゆきたいところです。
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