(9)適格請求書発行事業者の登録が不要なケース

Q 適格請求書発行事業者の登録が不要なケースがあるとすれば、どのようなケースでしょうか?

A もっぱら消費者を相手に販売・役務提供を行う事業者は、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要はないかもしれません。自社の業種、業態、顧客の属性を踏まえた検討をしてみられると良いでしょう。

1)適格請求書発行事業者の登録を受けることは、あくまでも事業者の任意
インボイス制度の開始にあたって、前述の「事例検討2」の①のケースのように、“現実的な対応”のもと、相当数の免税事業者も含めた多くの事業者が適格請求書発行事業者の登録申請を行うであろうとされています。
もっとも、その登録を受けるかどうかは、あくまでも各事業者の判断に委ねられています。そこで、取引の相手方からインボイス(適格請求書等)の交付を求められない業態であれば「課税事業者であっても適格請求書発行事業者の登録は受けない」ですとか、「免税事業者が課税事業者になるまでして、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要はない」との選択は、充分にあり得ます。
理解を深めていただくために以下、英会話教室を営む事業者の例を挙げつつ、適格請求書発行事業者の登録を受ける、受けないの判断の分岐点を探ってゆきたいと思います。
2)適格請求書発行事業者の登録が不要と思われるケース、とある英会話教室の一例①
例えば、事業者における顧客が消費者のみの場合、消費者はインボイスの交付を求めてこないため(消費者は消費税の負担はするが納税義務者ではないため、仕入税額控除の要件を満たすためのインボイスの受領は不要)、消費税の課税事業者であるかどうかにかかわらず、適格請求書発行事業者の登録を受けなくてもよいとの選択肢も検討に値するでしょう。
具体的には、例えば英会話教室を主宰する事業者の例を述べると、もっぱら個人の受講生に特化した「ビジネス英会話教室」や「大学入試対策英語講座」を開催している場合などが、それに該当すると思われます。
3)適格請求書発行事業者の登録が必要と思われるケース、別の英会話教室の一例②
もっとも、同じ英会話教室の業種であっても、たとえば顧客企業から選抜・派遣された従業員(海外駐在予定者)やその家族に対して英会話授業を行っているような場合、受講料を負担する顧客企業(消費税の課税事業者であることが前提)からは、毎月の受講料に係る消費税相当額について仕入税額控除の対象とするために、インボイスの交付を求めてくるでしょう。このように、顧客がインボイスの発行を求めてくることが想定される場合には、その事業者が免税事業者であるとしても、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があると考えるべきでしょう。
このように、等しく英会話教室であったとしても、「どのような顧客を相手にしているか」、「顧客がインボイスの交付を求めてくるかどうか」といった分析の結果次第で、インボイス制度への対応が分かれることが考えられます。

2022/4/4 税理士小林俊道事務所