(19)インボイス記載税額と帳簿の消費税額とのズレへの対応

 「消費税額等」の金額については、本体価額に適用税率を乗じて求めるとの関係上、1円未満の端数が生じる可能性が有るところ、インボイスへの「消費税額等」の記載が要件とされたことにあわせて、端数処理に関するあらたなルール「ひとつのインボイスに付き端数処理は税率ごとにそれぞれ1回」が設けられるに至りました。
 一方、税抜経理を採用している場合の帳簿への仮受消費税等の計上については、消費税法上、そのタイミングや端数処理について何らのルールも設けられていません。そこで、インボイス記載の税額と帳簿の消費税計上額にズレが生じる場合が出て来ます。こうしたズレについて、事業者はどのような対応をすれば良いでしょうか。
 こうしたズレが生じた場合の対応として、売上税額や仕入税額について積上げ計算を採用している場合には、ズレが生じたとしても強いて調整する必要はないとの方針を国税庁では示しています。
 その一方で、売上税額や仕入税額について総額割戻し計算を採用している場合には、ズレを解消するための調整が必要になります。この点、当該ズレの調整方法が問題となるところ、インボイスにおける税込支払対価と帳簿における売掛金もしくは買掛金の発生金額とが一致するような端数調整を会計仕訳(帳簿)において実施をするのであれば、総額割戻し計算における正しい売上税額と仕入税額がそれぞれ求まるところです(※)。また、会計の開示ルールに必ずしもとらわれない中小企業では、そうした端数調整を行う会計仕訳における売掛金や買掛金の相手科目について、特段のこだわりは要しないと考えます。

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(※)たとえば売上税額を割戻し計算方式により求める場合、課税期間中の課税資産の譲渡等の対価の額に基づいて課税標準額を計算するべきところ、この課税標準額は、対価として収受し、または収受すべき金銭等で、消費税および地方消費税に相当する額を含まないものと規定されているため( 消法28条 1項)、実際に収受された請求書等に記載された税込価額に基づいて計算しなければならず、帳簿に記載された税込価額に基づいて計算してはいけません。すなわち、課税期間中の請求書等に記載された税込価額に110分の100(または108分の100)を乗じて課税標準額を計算し、その課税標準額に消費税率を乗じて消費税額を計算します。

2023/12/28税理士小林俊道事務所