(11)免税事業者が免税事業者で居続ける場合にもたらされる影響は?

Q では、免税事業者が免税事業者で居続ける場合にもたらされる影響を教えてください。

A 取引相手が事業者である場合、取引対価の減額(消費税相当額の負担を軽減するとの趣旨)を含めた取引条件の変更を求められることが想定され、これを拒むと取引の打切を通告される可能性もあります。

免税事業者の継続を決めた場合には、事業者である顧客から、インボイス制度の開始後は取引対価の減額調整をしてほしいといった、取引条件の変更を求められることが想定できます(上記「事例検討2」の②を参照)。こうした求めに応じた場合、相手方は仕入税額控除を受けることができない一方で、取引対価の減額が行われる訳ですから、言われているような“インボイス制度の開始後に免税事業者が取引から排除される”との懸念は、現実のものとはなりにくくなるように思えます。ただし免税事業者側では、取引対価が減額となることによる売上減およびキャッシュフロー上の影響を受けます。“痛し痒し”とは、まさにこのような状況のことをいうのかもしれないとの感想です。
また、もしも免税事業者で居続けることを決めた上で、取引の相手方(買い手側)事業者から寄せられた取引条件の変更(取引対価の減額)を拒んだ場合には、相手方から取引の打切を通告される事態も予想されるところです(上記「事例検討2」の③の帰結を参照)。
このような検証をしてゆくにつれ、今般のインボイス制度の導入は、単なる税制に留まるものではなく企業間の取引自体にも影響を及ぼす、きわめて大きな改正であることがおわかりになられるかと思います。
ちなみに上記で述べたことは、インボイスの交付を求めてくるような、事業者を相手にして商品や役務の提供を行っている場合にあてはまるものと考えます。そこで、先述のQ&Aにおける“英会話教室①”のような、もっぱら消費者を相手に商品や役務の提供を行う免税事業者においては、免税事業者で居続ける(適格請求書発行事業者の登録を受けない)ことについて及ぼされる、特段の影響はないものと思われます。

2022/07/28 税理士小林俊道事務所